1チャンネルのサーミスタ温度計とAVR本体に内蔵の温度計で2チャンネルのファンを制御する、電圧制御方式のデジタルファンコンです。
Rev8.0は、お手軽にファンコンを利用したい時に使えるように作ったもので、主な特徴は、
- 8ピンのAVR ATtiny85を使用しコンパクト化
- USB機能をソフト的に実現するV-USBを利用し、USBチップを省略
- USBはHID(ヒューマンインターフェースデバイス)クラスを利用し、PC側はドライバのインストールが不要
- 水冷ポンプなど大電流負荷時の発熱に耐えられるよう、MOSFETのヒートシンク設置スペースを確保
- 極力安価かつ入手が容易な部品を使用することで、製作費を1台あたり2千円以内(基板、温度センサー込)に抑制
- 抵抗、コンデンサなどは、リード線タイプおよび表面実装のどちらでも利用可能
- 電子工作ファンが基板から自作できるように、PCB配線は片面(半田面)に集中化
- PCIまたはPCIe×1スロットに固定可能
などです。
一方、廉価かつ小型化したために、
- ファームウェアの書込みはオンボードではできないため、別途専用の書込み器を用意する必要があり、事実上バージョンアップは不能
- サーミスタ温度計は1本のみ接続可能で、AVRの内蔵温度センサと合わせて最大2チャンネル分しか温度測定できない
- ATtiny85はファームウェア用メモリが8kBしかないため、温度計測などのプログラム簡易化により精度低下
- 省スペース化のため、電源コネクタはFDD用を採用(場合によっては欠点ではないかも)
など、割り切ったところもあります。
なお、水冷ポンプなどの大電流負荷に対応するには、MOSFETにヒートシンクを設置するとともに、コイルを47~68μH程度で電流容量が適合するものに変更する必要があります。(改造だけでなくいかなる場合も、当方では責任を負いかねます。自己責任でお使いください)
作者の自作PC用に製作しましたが、基板単価を下げるためPCBを余分に発注し、ご希望の方にキットとして実費相当でお分けしていました。現在は在庫がありません。
動作概要
マイクロコントローラICのAVR ATtiny85が温度を測定し、設定パラメータに従ってファン制御用パルスをPWMで出力します。このPWM信号を12Vに増幅後、平滑回路を通して直流化しファンへ供給します。出力電圧が温度によって4V程度から12Vまで変わることにより、ファンの回転を制御しています。また、ファンからの回転パルスにより回転数を計測します。
PCとUSBで接続することにより、温度、回転数などをPCに報告し、PC側のモニタソフトFanduinaV3でモニタすることができます。(モニタしないときは、FanduinaV3を起動しておく必要はありません)AVR-Fanconの設定パラメータは温度と回転数(正確にはPWM出力のduty値)との関係を表すもので、必要に応じてFanduinaV3を使用して変更することができます。
USB機能は、Objective Development社(http://www.obdev.at/products/vusb/index.html)のV-USBというソフトをAVR(ATtiny85)のファームウェアの一部として組み込んでいます。V-USBは、商用とフリー(GNU General Public License Version 2 (GPL)) の2つのライセンス形態があり、フリーで使用するには回路図とコードのソースリストを公開する必要があります。ということで使用に当たって当HPで公開しますが、日本語で良いかどうかは不明です。
tinyFanduinoの製作概要(リード線タイプの部品を使用)
工具類の準備 | 写真のように工具類を準備します。 左上から右に、 作業手袋(火傷防止のため)、ハンダ、 ピンセット、ニッパ、ラジオペンチ、フラックス、 マスキングテープ、ハンダ鏝 です。 Rev8.0では、フラックスは不要です。 |
部品 | 左上から右に、 電源コネクタ、USBコネクタ、ファンコネクタ、LED、PchMOSFET、3端子レギュレータ、NchMOSFET、NPNトランジスタ 中段左から右に、 基板(73×73mm)、ポリスイッチ、抵抗12本、積層セラミックコンデンサ、ショットキーダイオード 下段中央から右に、 ピンヘッダ、ジャンパ、AVR(ATtiny85)、ソケット、コイル、チップ電解コンデンサ です。 |
JMP2の短絡 | 最初にJMP2をハンダで短絡しておきます。 使用しているAVR(ATtiny85)はピンが8本しかないので、リセットピン(1番ピン)もFan2の回転数計測用端子として使います。しかし、そうするとファーム書換は専用のツールが必要になってしまうので、Fan2の回転数計測をあきらめてリセットピンのまま使いたい時には、JMP2をオープンにしておいてください。 |
1.抵抗・ダイオードの取り付け | 抵抗は4種類で、 1.5kΩの金属皮膜抵抗(水色) 1MΩ、75Ω、1.5kΩのカーボン抵抗(ベージュ) です。 ショットキーダイオードには、極性がありますので、上の写真を参考にして、間違えないようにして下さい。 [抵抗のカラーコード] 金属皮膜抵抗 1.5kΩ(±1%):茶 緑 黒 茶 茶 カーボン抵抗 1.5kΩ(±5%):茶 緑 赤 金 75Ω(±5%):紫 緑 黒 金 1MΩ(±5%):茶 黒 緑 金 |
2.PchMOSFET・LED・電解コンデンサの取り付け | PchMOSFETの2SJ681は、上のように足を直角に折り曲げて取り付けます。大きめの負荷をつなげる時は、熱を基板に逃がせるように、部品の頭を基板にハンダ付けします。 LEDは極性があり、足の短い側がカソード(-端子)です。上の写真では左側がカソードになっています。 電解コンデンサにも極性がありますので、写真のとおり取り付けてください。表面実装のチップ部品は取付にコツがあって、基板上の片側の端子に予めハンダを盛っておき、盛った所をハンダ鏝で加熱しながら、ピンセットで部品をつまんで押し当てていきます。 |
3.半導体類の取り付け | 3端子レギュレータ、NchMOSFET、NPNトランジスタは、どれも3本足で同じ形をしていますので、印刷型番を確認のうえ取り付けてください。 極性がありますので、基板のシルク印刷に合わせて間違いのないように。 |
4.その他部品の取り付け | 残りの部品を取り付けます。コネクタなどは基板から浮き上がらないように、取り付けてください。 (Rev7.0の作り方で解説していますので、参考にしてください) |
5.AVRの取り付け | AVR(ATtiny85:ファーム書込み済み)をソケットに取り付けます。右下が1番ピンですので間違えないように。(反対向きに取り付けて起動すると壊れますのでご注意を) また、JMP1はAVRの電源供給選択用のジャンパで、通常は12V側(左側)を短絡します。(AVRには3端子レギュレータで3.3Vに降圧して供給します) |
6.最終確認 | 電源につなぐ前に、ハンダ付けにミスがないかを十分に確認してください。特に、極性のある部品や、抵抗値の誤りは要注意です。 ここまで、電子工作に慣れた方なら大体30分で組み立てられると思います。お疲れさまでした。 なお、温度センサー(1本)の作り方はRev7.0のページを参考にしてください。 |
使用方法
(1)Rev8.0の接続 PCの電源を完全に落とした状態で、USBケーブル、温度センサー、電源(FDD用の5V、12V 4ピンコネクタ)、ファンを接続します。 PCを起動すると、最初の3秒ほどはファンが全速回転し、その後は温度センサーの計測温度に応じてファンを制御します。 Rev8.0の動作情報(温度、回転数)をモニタするには、FanduinaV3を起動し、接続ダイアログFanduinoConnectから接続ポートを設定し、接続ボタンをクリックします。 なお、Rev8.0は自律的に動作しますので、表示・設定・監視の必要がなければ、FanduinaV3を起動しておく必要はありません。 | |
(2)制御パラメータの設定 パラメータ書込タブで、AVR-Fanconの制御パラメータや温度計・ファン名称を設定します。 制御パラメータの意味は以下のとおりです。 ・温度が Tmin 以下では制御出力が Dmin(%) となり、Tmax 以上で Dmax になります。TminからTmaxの間ではリニアに変化します。 ・Tstop はFanを停止する温度で、温度がTstopまで低下するとFanが停止し、Tmin 以上になるとFanが再起動します。(低温時Fan停止機能と呼んでいます) ・Thm# は、Fanを制御するサーミスタ(温度計)の番号(1~4)です。重複設定も可能で、例えば4つのThm#を全て1にするとサーミスタ1の温度で全てのFanを制御できます。 |
AVR-Fancon Rev8.0 tinyFanduino仕様
Fan接続可能数 | 2台 (独立制御) |
Fan最大電流 | 各500mA(MOSFETを冷却し、コイルを変えることにより変更可能) |
Fan制御方式 | 可変電圧制御(4V程度~12V) |
Fan停止対策 | 起動時、スリープからの復帰時、Fan停止検出時は数秒間最大回転させてFanの始動失敗・停止を防止 (停止検出のためFanは回転数センサー付が必要) |
温度センサー | サーミスタ方式(無極性2ピン)×1本 10.0kΩ at 25℃、B定数 3435K(石塚電子製サーミスタ103JTを推奨) |
USB | LowspeedUSB×1本(USBーB端子) |
電源 | 12V FDD用4ピン (ただし、AVRは12Vをレギュレータで降圧し3.3Vで動作) |
最大消費電力 | 接続Fanの定格電流の合計+AVR分(少々) |
PC内設置方法 | PCIスロット、PCIe×1スロットに挿入して固定など |
対応OS | 特になし(モニタソフトFanduinaV3はWindowsXP/Vista/7/8/10に対応) |
その他特徴 | 駆動回路はPWMであるため使用素子の発熱が少ない |